大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和51年(オ)1064号 判決 1977年1月31日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人大野幸一、同工藤健蔵の上告理由一について

準消費貸借契約は目的とされた旧債務が存在しない以上その効力を有しないものであるが、右旧債務の存否については、準消費貸借契約の効力を主張する者が旧債務の存在について立証責任を負うものではなく、旧債務の不存在を事由に準消費貸借契約の効力を争う者においてその事実の立証責任を負うものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところ(昭和四二年(オ)第六八七号同四三年二月一六日第二小法廷判決・民集二二巻二号二一七頁参照)、原審において上告人は訴外青木源七と上告人間の従前の手形貸付による残元金合計七三〇万円のうちその主張する四三〇万円の返還債務が存在しないことについて立証を尽くさず、原審は証拠により右七三〇万円の債務を目的とする準消費貸借契約が締結された事実を認定しているのであるから、その判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

同二について

いわゆる仮登記担保権者が担保設定者に対し権利を実行する場合、その被担保債権について民法三七四条の規定が準用されないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところであり(昭和四六年(オ)第四六七号同四七年一〇月二六日第一小法廷判決・民集二六巻八号一四六五頁参照)、右判例は、いまなお変更の要をみない。これと同旨の原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗本一夫 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田 豊 裁判官 本林 譲)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例